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コーポレートブランドとは:企業成長の要諦 [経営戦略・マーケティング]

【コーポレートブランドとは】

1.コーポレートブランドとは
自社と他社を識別するためのブランド。企業レベルで識別するためのブランド。企業の製品・サービス全てに影響を及ぼしている。日本のブランド展開はコーポレートブランド主導であると言われている。日本では製品ブランドよりもコーポレートブランドが商品の購買意思決定に大きな影響を及ぼしているとも言われている。

2.ブランドの階層
ブランドの階層には主に、①コーポレート・ブランド(企業ブランド)、②ファミリー・ブランド、③製品ブランド(商品ブランド、プロダクト・ブランド、個別ブランド)の3層がある

コーポレート・ブランドと、ファミリー・ブランド(例えば「VAIO」「ビオレ」のような)のちょうど中間的な位置付けで、「Panasonic」「MUJI」「牛角」のように、企業内の事業単位でブランドとして認知され、製品・サービスにも展開しているものは一般に、「事業ブランド」と呼ぶ。

個々のブランドについて、「これは製品ブランドか、ファミリー・ブランドか」と厳密に区別することは、あまり意味がない。重要なのは、ブランドの階層を整理したうえで、企業が展開するブランドを体系化し、管理することである。
引用:グロービス・マネジメント・スクール)

3.コーポレートブランドとプロダクトラインブランド(製品ブランド)
一般的なブランドの対象と範囲は以下のとおりである。
○企業ブランド(コーポレートブランド)
○事業ブランド(レンジブランド) カテゴリー・事業領域を統一化

○製品ブランド(プロダクトラインブランド) 商品名

○サブブランド

○属性ブランド(コンポーネント/サービスなど)
これらのブランドネームは組み合わせで使われることが多い。一般的には「コーポレートブランド+プロダクトラインブランド」という方式が多い。あまり多層的だと十分認知・理解されないし、記憶もあいまいになる。だが情報としては、ブランドの体系に沿った形で、よりシステマティックに提供され、記憶されることのほうが望ましい。従って必ずしもコーポレートブランドのみの差別化ではなく、プロダクトラインブランドの特性も理解・記憶してもらうことのほうが、ブランドコミュニケーションは円滑に行える。

(日本自動車工業会 2001より引用)

4.プラットホームとしてのコーポレートブランド

 エルメス、ルイ・ヴィトン、シャネルなどのスーパーブランドはほとんどがコーポレートブランド中軸の知覚構造を持っている。中心になるプロダクトのブランドアイデンティティが明確であり、商品領域も一定の秩序があるから可能なことである。ただ、日本の代表的大手メーカーになると、コーポレートブランドとプロダクトラインブランドが調和を持って一体化していることのほうが有利なのではないか。

 両者の関係は、人間で言うなら「姓」と「名」のようなものである。家電製品のように、一応プロダクトラインブランドはついているが、それはむしろ商品特徴を指し示すにすぎず、実際はナショナルの冷蔵庫、日立の洗濯機、東芝のエアコンというような訴求をしているものもある。

 しかし、本当の意味でのパワーブランドは、企業名と商品名が密接に結びついている。典型はソニーで、ウォークマン、バイオ、ハンディカム、プレイステーション、アイボなど、プロダクトラインブランドがSONYというコーポレートブランドと明快に結びついて人々に記憶されている。

 今後、事業の多様化や競争環境の複合化のなかで、コーポレートブランドによる保証性は重要なものと考えられる。しかし、それは「名」(プロダクトラインブランド)の認知・理解を上げるためのプラットホーム的役割を果たすのであって、コーポレートブランド「姓」のみ知られても、その中身についての知識が伴わないものは不十分であると考えられる。     (日本自動車工業会 2001より引用)


(コーポレートブランドの位置づけ 日本自動車工業会 2001)

5.ブランド戦略の事例(1)

現状では、高い価値を持つブランドの上位はほぼアメリカ企業で占められている。しかもマルボロなどの例外を除き、ほとんどの場合、企業名とブランド名が一致している。また、ローカル・ブランドとの使い分けではネスレの戦略が優れており、個々のブランドの独自性を生かしつつ本社がそれを統括するモデルでは、「LVMH(モエ・ヘネシー・ルイヴィトン)」が参考になる。

 一方、日本企業では、松下電器の製品でパナソニック、ナショナルなどが混在するなど、グローバル・ブランドの構築では失策が目立つ。ユニクロを例にとれば、ユニクロは企業名なのかブランド名なのか釈然としない。ブランド戦略が迷走しているのだ。

 グローバル・ブランド戦略における鉄則として、コーポレートブランドと社名は一致させること、ソニーの「クオリア」のように、既存のブランド価値を否定するような上位、あるいは下位のブランドを作らない、などがあげられる。ただし後者には、高級ブランドのディフュージョン(ダナ・キャランにおけるDKNYなど)のような例外もある。また、ナイキ、メルセデス・ベンツのように視認性の高いロゴを持つことも有効だ。

(大前研一 2005)


6.ブランド戦略の事例(2)

コーポレート・ブランド戦略の事例として、セコムを挙げてみたい。ここではセコムの企業文化によるブランド構築を考える。同社にはセコム憲法というものがある。事業の憲法による規律ある組織文化作りを行っている。

セコム憲法:”セコムは、常に社会の変化を継続的に注視し、受動的な態度でなく、能動的に社会の変化に先駆けて、社会サービスシステムを準備し、実行する責任を有する。(中略)当然のこととして、最初の段階では、社会習慣に馴じまず、相当な障害が予想される。しかし、それだからこそ、セコムが選択する価値のある事業なのである。あきらめることなく、果敢に挑戦し実現させるべきである”

● 事業の憲法:「社会に有益な事業であること」「革新的技術に立脚していること」「セコムが実施することが最適であること」「常に新しい社会システムサービスを創出すること」「妥協的提携は一切やってはいけない」

● 時々の問題を素早く解決して、顧客の信頼を確実に得る文化:業務上の緊急問題を解決するために、本部長、本部の業務部長、支社長、支社の業務課長と順に指示を下していったのでは時間がかかり過ぎ、顧客の信頼を失いかねない。そこで組織が小さいころの同社では、本社からの指示をダイレクトに支社の業務課長に伝えていた。そうした創業当時の習慣は今に受け継がれ、現在でも重要な指示は中間の管理職の頭越しで担当の部課長に伝えられる。




このような顧客の要望にスピーディーに対応できる体制を同社は有している。

7.ブランドマネジメントの要諦

 他の同種商品と区別するためなら、「標識性」が明快であればいいが、それでは消費者はどのような基準でその商品を評価していいかわからないこともある。そこで、主にコーポレートブランドによる「保証性」の提示と、商品コンセプトのブランド表出により消費対象であるかどうかの判断を誘導する「意味性」の訴求が必要となる。

 この点から考えても、ブランドが多層的構造性を持ち、複合的な知識を明示していることのほうが、消費者の頭のなかに記憶されやすいわけだ。従って、コーポレートブランドだけで勝負し、プロダクトラインブランドの特性があまり伝えられないものは、ブランド構造としては中途半端と言わざるを得ない。理想を言えば、コーポレートブランドとプロダクトラインブランドが、「姓」と「名」のように一体化し、両者相まってブランドの特徴(アイデンティティ)の認知を促進し、消費者の頭のなかに整合性を持って記憶されていくことが望ましい。そして、強いコーポレートブランドが新しいプロダクトラインブランドの開発をより有利に展開する土壌となり、逆に有力なプロダクトラインブランドの台頭が、コーポレートブランドをより強化し、相補的にブランドエクイティを高めていく。それを追求していくことが、ブランドマネジメントの要諦である。

(日本自動車工業会 2001より引用)




企業事例に学ぶ実践・コーポレートブランド経営

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2002/10
  • メディア: 単行本



コーポレートブランドと製品ブランド―経営学としてのブランディング (創成社新書 19) (創成社新書 19)

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  • 作者: 簗瀬 允紀
  • 出版社/メーカー: 創成社
  • 発売日: 2007/11/25
  • メディア: 新書



ビジョナリー・コーポレートブランド

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  • 作者: 水尾 順一
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  • メディア: 単行本


2018-10-27 22:21  nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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